第171回 実践ソリューションフェア2026報告~その1~

当社大塚商会最大の催事である実践ソリューションフェアにて、セミナー講師および個別相談に対応しました。中小中堅製造業における設計部門改革への機運の高まりは感じることができましたが、その一方で、改革前の意識や考え方の統一を図ることが急務と感じました。相談事をテーマに、その1、その2として2回に分けて報告します。

実践ソリューションフェア2026報告~その1~

カラカラ天気がズーっと続いていましたが、2月上旬は多摩在住の私のところにも雪がけっこう降りました。スマドリ派になった今もホッピー(つまり外)だけはケース買いをしてテラスに置いています。綿帽子のように雪をかぶったホッピーを部屋に入れて飲んでみました。なかなか良い景色です。
雪見ホッピー外だけ……

流用化・標準化設計プラットフォームを導入した場合の設計業務フローがイメージできません!?

フェアで行ったセミナーの訴求点である

  • ECM(エンジニアリングチェーンマネジメント)+SCM(サプライチェーンマネジメント)をDXの支援を受けて実行する
  • その勘どころとしての上流側改革の肝であるECMの具体的なDXとして流用化・標準化設計プラットフォーム+BOM構築の導入

というもくろみに対する手応えが感じられたことには安堵(あんど)しましたが……、その後の個別相談対応では「うーっむ」とうなってしまう内容が多くありました。

集約すると「ECMとして流用化・標準化設計プラットフォームを導入した場合、設計業務フローがどのようになるのか、変わるのか、分かりません。教えてください」というものです。
「あのですねー!」という言葉を喉で押し殺しながら私は我慢しながら聞いていました。

なぜか?……
コンサルタントとして一番頭の痛い「答えを教えてください!」の部類に入る相談事だからです。
「蛸壺設計状態の設計部門の現状否定ができたことは良し」としても、「どのように改革して、どのような設計部門にしたいのか? その結果としての設計業務フローはどのようにあるべきか?」について、私がその「解」を持っているわけではないのです。

中小中堅製造業という言葉でくくってはいるものの、業務体系各社各様、製品、規模、生産体系等々千差万別です。従って「解」も千差万別、私のような一介のコンサルタントが「御社の改革の解はかくかくしかじかです」などと詮議できるわけではありません。私が支援できることは、その「各社各様の解」を得るための「アプローチの方法や考え方・方針、参考他社事例紹介」です。
ですから、お預かりする製造業のプロジェクトメンバーに対し「とことん考え抜いてください」と念仏のように繰り返し願うのです。

理由は……
「現状否定できたのだから、改革のプロセスやあるべき姿、伴う新業務フローを設計部門全体で、自社としての解を合意形成して実行してほしい」という思いがあるからです。もちろん、「一緒にアプローチの方法や考え方・方針、参考他社事例を交えて、アドバイスをしながら伴走してほしい」という要望に対してお手伝いすることは可能です。これを私は「地ならしコンサル」と呼んでいますが、あくまで「伴走」です。

流用化・標準化設計プラットフォームはDXと呼ばれる道具でしかありません。その道具に「魂=情報(BOMや設計資産など)」を入れるのはプロジェクトメンバーと設計者であるべきです。そうでなければ「自前の道具」にはなりません。その「魂」をどのように用意して、それに伴う「汗」をどのように分担しながら、進めていくのか? 大切なコンセンサスです。
そして、その延長線上に設計部門改革成就の成果としてECMが可能な設計部門となれるわけです。つまり、それが「解」としての結果なのです。

設計部門の内部意思疎通のない中で……

とはいうものの、いきなり「答えをください」と言わざるを得ない設計部門の現状を理解できないわけではありません。
蛸壺設計環境が長く続き、今まで現状否定など発想にも至らなかった設計部門内で「ECMを可能とするために流用化・標準化設計プラットフォームを導入しよう!」との気づきを得た設計者が提案しても、「それってどういうこと? 設計業務がどう変わっていくの?」から始まり、とどめは「こんなに忙しいのに余計なことは勘弁してほしい」で機運はダダ下がりとなります。

私の常とう句「設計者は自分のメリットにならないことは絶対にやらない!」という性に、せっかくの改革提案も埋没してしまうのです。私のセミナーでは「ECMによって設計が楽になりますよー」と言い続けていますが、そのまま設計部門に伝えても、このメリットを設計者に具体的にイメージしてもらうことは難しいでしょう。設計者の性に寄り添った「理詰め」の説得が必要です。

従って、わらにもすがる思いで「ECMとして流用化・標準化設計プラットフォームを導入した場合、設計業務フローがどのようになるのか、変わるのか、分かりません。教えてください」という相談事が生ずることは理解できるのです。
しかし、そうであっても「現状否定できたのだから、改革のプロセスやあるべき姿、伴う新業務フローを設計部門全体で御社としての解を合意形成して実行してほしい」という思いは変わらないのです。

まずは「設計部門の内部意思疎通の改善」から始めましょう。
蛸壺設計ですから各人各様の設計手法や設計コンセプトが壺ごとに存在するわけで、「隣は何する人ぞ」で完結しています。時々、問題意識のある設計者が流用化設計へのチャレンジを試みるも挫折を繰り返し、結果「現状否定」は「余計な仕事を背負い込むだけ」という考えがまん延し、定着してしまいます。

その意味からしても「ECMを実行するぞ!」と大上段から構えても「はーっ?」という反応が待っているだけです。ですから、スモールステップを踏んでいきましょう。その意味で、設計者同士の意思疎通の「訓練」から始める必要があると考えています。
今までやったことがない意思疎通です。やはり、そのための「訓練」は必要です。設計者同士が「へー、そんな風に考えているのかー?」とか「それって、同感」という技術的コミュニケーションスキルを磨く練習を実行できる機会を作りましょう。

私はこのプロセスを「技術基準のすり合わせ」と呼んでいます。この「すり合わせ」を重ねて、繰り返すことによって、いきなり蛸壺の壺を割ることはできないにしても壺が「陶器から透明なガラス製」になれば、まずは大きな第一歩となるでしょう。それは設計資産の共有化に向けての初めの一歩なのです。

次回のコラムでは「実践ソリューションフェア2026報告~その2~」として、「技術基準のすり合わせ」の具体的な実例を述べたいと思います。

以上

次回は4月3日(金)の更新予定です。

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