第173回 流用化・標準化設計改革と保守(部品)事業改革とは表裏一体

流用化・標準化設計改革の重要性を今更説く必要は感じませんが、「保守(部品)事業の成否を握る改革でもある」という理解が伴わない事例に遭遇します。あらためて、その辺りをまとめて述べます。

流用化・標準化設計改革と保守(部品)事業改革とは表裏一体

友人が経営するヴェトナム現地法人工場を訪問する機会があり、ハノイを久しぶりに訪れてみました。ヴェトナム工場見学報告は次の機会に譲るとして、開口一番「やはり人口が増えている国のバイタリティーは違うな!」とつぶやいてしまいました。そこには日本が失ってしまった「何か」がしっかり存在すると素直に感じたからです。
期待していなかったヴェトナム国産ノンアルコールビール「SAGOTA」でしたが、「旨いぞ!! 日本で売れるゾ」(個人的感想です〈笑〉)
「でも、ヴェトナムって共産国だったよなー? 何だーこの自由経済感は??」といろいろ混乱するのでした……

「製造業は二毛作」を再々再々度、しっかり理解する

本コラムでも何度となくこの二毛作キャッチフレーズ(?)を繰り返し述べて解説していますが、しっかり理解というか腹落ちしていないケースにいまだ遭遇します。

製造業として存在する以上、

  • 一毛作:製品販売事業から得る利益
  • 二毛作:保守(部品)事業から得る利益

「この二つの利益をしっかり享受する」ということなのです。当たり前と言わないでください。

この辺りを理解している中堅中小製造業の経営者も、もちろん存在します。一方で、「本当にそのとおりなのですが、一品受注型の製品群で多種にわたる部品を扱いながらのもうかる保守事業とは、一体どうやったら良いのか分かりません」と率直に吐露する経営者が存在することも確かです。

うすうす「あふれた類似部品群をマネジメントすることが肝のようだ」という気づきはあるものの、具体的な一歩が踏み出せないでいるということなのです。
また、特に設計部門改革の最中に感じることが多いのですが……
「二毛作目って、保守部門の話ですよね」という関心が希薄になった意識の存在です。
少し設計者の立場で言い換えると、「設計出図納期に追われて、イッパイ、イッパイ。保守のことまで考えていられません」ということでしょう。

本来、技量のある設計者は保守目線を持って製品設計を完成させる能力を持ってはいますが、やはり蛸壺(たこつぼ)設計という孤独環境設計では、まずは迫りくる出図納期に目線が下がってしまうのもやむを得ないと考えます。
これらの現状を現実的に捉えると全社的に構造変革していく必要性をあらためて感じます。特に中小中堅製造業の保守事業のあり方の見直しと具体的な改革方針の実行が必須です。「それは理想論でしょう」では生き残れないと考えるからです。

従って、改革成就の先には、保守事業のプロフィットセンター化という二毛作をかなえる経営資源としての利益構造が生まれることをしっかり認識し、そのことを改革のモチベーションとして進捗(しんちょく)させるべきです。

保守事業の肝は「正しい部品」を「早く届ける」

このフレーズも何度も述べ、かつ当たり前なのですが、「言うは易(やす)く行うは難し」の典型でしょう。実現するためには多くの改革を要します。
改革以前(現状)の保守事業の状態は……

「正しい部品」
蛸壺設計や使い捨て図面の氾濫の結果、「類似部品」が保守を難しくさせます。

  • 「この製品には多くのバージョンが存在するが適合する部品はどれ?」から始まって、結果、「どのバージョンか分からないので製品の写真撮ってメール添付してください」→CS(Customer Satisfaction:顧客満足)無視
  • 「似たバージョンの部品を数種送ります。このうちのどれかが適合するはずです」→CSも利益も無視

「早く届ける」
類似部品の氾濫が「早く届ける」の具体的解決策である「在庫」を困難にします。

  • 「これから作成ですからお届けは1カ月後です」→CS無視どころか顧客憤慨→顧客が自己調達を試みる(この現実をたくさん見ています)→保守事業の崩壊
  • 「顧客が故障して怒っているから、特急料いくらでも良いから払って外注に発注」→利益どころか大損→保守事業の崩壊

この実例のように悲惨な保守事業の実態です。せっかくもうけた一毛作目の収穫を石つぶし保守事業が費やしてしまうのです。

「言うは易く行うは難し」と言いました。つまり改善への魔法の粉はないということです。しかし、即効ではないものの着実に保守事業をプロフィットセンター化させる改革が存在します。それが設計部門の流用化・標準化設計改革なのです。どうか、この関係に気づきを持ってほしいと思います。

この改革と保守事業のプロフィットセンター化との因果関係の詳細は説明不要と思いますが、蛸壺設計が流用化・標準化設計に変革することで「使い捨て図面」や「類似部品」の撲滅と同時に流用化・標準化部品・ユニットの多用環境が生まれてきます。時間が掛かっても着実に変革を継続していけば、困難に思えていた流用化・標準化設計改革の進捗が肌で感じられるようになります。

ここまで来れば、相乗的に「正しい部品」を在庫して「早く届ける」ことが可能となるわけです。つまり、設計部門の流用化・標準化設計への改革は設計部門・生産部門の効率改善のみならず保守事業のプロフィットセンター化も実現させる「一石二鳥、三鳥?」の改革なのです。
「流用化・標準化設計改革と保守(部品)事業改革は表裏一体」という本コラムの題名はこの関係を指し示していることを理解してもらえると思います。

結論として、流用化・標準化設計改革という大仕事に対するリワードは大変大きいということです。このことを改革成就へのモチベーションとして捉え、特に経営層は改革のために汗をかきながら奮闘している設計部門の背中をもう一押ししてほしいと考えます。

以上

次回は6月12日(金)の更新予定です。

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