第30回 トップダウン・ボトムアップ

本コラムもおかげをもちまして30回を迎えることができました。
節目ということで、少しいつもとは異なった視点から書いてみたいと思います。

それは中小企業が改革を図ろうとした時、必須となるモチベーションプランの原動力となる「意思」についてです。

特に設計部門改革コンサル業務にあたって、私が常に強く戒めているのが設計部門改革に必須な「意思」の存在確認です。
それはトップダウン・ボトムアップという改革への意思とその広がりの方向です。さらに目指すは、それらの融合です。

ヒエラルキーとしての組織が構成され、いわゆる、「上意下達」の典型がトップダウンです。
「有無を言わさず、粛々と」ということになり、大企業はこの手法を良くも悪くも選択することになります。
問題はこのコラムのメインターゲットである中小企業の場合です。

多くの会社がヒエラルキーを持ち合わせていませんし、重ねて設計部門改革に「遠慮」している経営者さえも存在することを私は何度も見てきました。
このような設計部門に物を言えない経営者のトップダウンは非力であるし、「有無を言わさず、粛々と」とは行かず、改革はとても成就しません。

逆にボトムアップはどうでしょうか?中小企業の設計部門でこのボトムアップを提起するために、発起人たる設計者には以下の様な重い十字架が課せられるのではないでしょうか。(少しオーバーに表現しますが・・・)

1:改革開始へは経営者と刺し違える覚悟(辞表を胸に・・・そして刺されるのは当然設計者)
2:設計部門全体を巻き込んで常にモチベーションプランニングを継続する覚悟
3:失敗の責任の覚悟

いちリーマンがここまでやるか?という疑問を持つかもしれませんが、程度の差はあれ、「本当にこのままでは駄目だ!座して死するよりは!」と危機感を抱いている志ある設計者は存在します。
今までに何度も述べましたが、中小企業の場合、社員一人の付加価値や志の高さがそのまま業績に直結します。
改革の必要性を説き、何とか実行しようとするその姿を見ると、まさに中小企業の宝たる存在であると思います。
毎月25日に成れば給料が入ってくるというリーマン生活をあえてリスクにさらして、改革にチャレンジする意思は「このまま続けていてもこの会社は存続できないかもしれない」という、止むに止まれぬ状況から由来するのかもしれません。

中小企業の将来の見通しというのは、案外一社員でも正しく把握している物です。
ではどのようにすれば、このような有意義なボトムアップを生かしていけるのでしょうか?結論から言えばこのボトムアップとトップダウンの融合が必要だと考えています。

どちらが先でも良いと思います。
しかし、必ず両方の歩み寄り、相互理解、そしてビジョンの統一が必須です。
何よりもトップは自分一人ではできない改革を断行している設計者に理解とリソースを与えるべきだと強く思います。
このトップの意思や態度がトップダウンの本当の姿だと思います。

私自身のボトムアップ経験は超オーナー会社に居たため、それはある意味壮絶でした。
オーナーいわく「なぜ、俺が会社をやっているか分かるか?俺の好きな様に経営するために田地田畑入れてオーナーをやっているんだ!」私が専務であっても「俺と谷口とは月とスッポン、谷口と社員は紙一重」とよく言われたものです。
しかし、ひるがえって考えて見ると全くその通りです。
その代わり、「これは俺がやりたい事だった。とか、俺の勘が共感している」と成れば、その場で即決、即実行の無条件執行(好きなようにやれ、その代わり成功させろ)でした。

このスピード感やダイナミズムは大企業には存在しません。
このようなプロセスを重ねる事こそが中小企業を営む意義や醍醐味ではないかと思っています。
「強い中小企業」の裏側(?)は多かれ少なかれこのようなものだと思っています。

その意味からも「改革?その費用対効果を見せろ」と経営者(層)が言い始めたら、中小企業としての存在意義が半減してしまうのではないでしょうか?

ましてや費用対効果で正しかったものなど私は一度もお目にかかったことはありません。
中小企業の経営者がこのような費用対効果によって経営判断のリスクヘッジを始めたなら、経営の意味が無くなってしまうというのが私の考えです。

ボトムアップの存在をどのようにトップダウンにつなげて行くのか。
これはトップダウンをボトムアップにつなげて行く事より難度が高いとコンサルティング業務を通じて思っています。
いつも知恵と工夫を求められる部分でもあります。
なぜなら、この志のこもったボトムアップを消失してしまったら、その会社は二度と改革は実行できないと思うからです。

次回は6月6日(金)の更新予定です。

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