第179回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その101~意味あり品目コード体系からの完全脱却の難しさ
流用化・標準化設計改革の初めの一歩である一意の品目コード体系ですが、基本的にはランダム系(意味なし)への移行に同意が得られても、どうしても残したい意味あり部分に最後までこだわるケースが多くあります。この辺りの事情を掘り下げてみましょう。
設計部門BOM改善コンサルの現場から~その101~意味あり品目コード体系からの完全脱却の難しさ
マレーシアで製造業フォーラムがあって訪問しました。マレーシアへは多くの渡航経験がありますが、スマドリ派になってからは初めてです。そこでようやく気づきがありました。ノンアルビールを探していたのですが……
そういえば、今まで飲んでいたビールはタイガー(シンガポール発祥のブランド)か、シンハー(タイのブランド)、時々カールスバーグ(デンマークのブランド)だったなー。そういえばマレーシア産のビールって飲んだことがないな……?
スーパーの店員にマレーシア産ビールはあるのか聞いたら、「ギネス系ならあるが、ほとんど売られていない」とのこと。ノンアルビールはあるかと尋ねると「イスラム教か?」と聞かれ、「NO」と答えると「ビールを飲めば」と言われてしまいました。
少なくともこのお店では、ノンアルビールって「それ何?」という扱いのようでした。そもそも酒があまり飲まれていない国で「ノンアルビールは?」と尋ねるのは愚問なのかもしれません(笑)
30年間維持できる品目コード体系を目指そう! しかし……
品目コード体系にまつわるテーマは、このコラムでも何度となく述べてきましたが、「またか!」と言わずに付き合ってください。コンサルティング実行中の重要テーマとして、必ずといって良いほど多くの時間を必要とする最初の関門なのです。
さらに厄介なのは、一度決定しても、再度検討要求が出るテーマでもあるという点です。
お預かりした(している)会社には、それなりに「品目コードらしきもの」は必ず存在しています。重複している、体系を逸脱したものが存在する……などの致命的な問題はあるものの、その大多数は「意味ありコード」です。どのような意味を持たせているのか?
分類してみると、
- 製品ごとに分類
- 機能ごとに分類(どのような機能の部品なのか)
- 部位、Assyごとに分類(どの辺りに使うのか、組み立てるのか)
- 発注先ごとに分類(外注先、購買ベンダー、メーカーなど)
- 工事番号ごとに分類(類似製品でも工事番号が異なると別製品扱い)
等々
これらと発番順の数字とのハイブリッド体系となります。加えて図番を品目コードとして代用している場合は、さらに複雑な体系となってしまいます。当然、部外者には理解の及ばないコード体系ではありますが、社歴の長いメンバーには「その意味」が理解できます。そのことが「安心感」に直結しているのです。
従って、意味なしコード(=ランダムコード)体系の将来性は理解できても、「安心」できません。つまり「不安」なのです。もっとも、その「不安」の理由はよく理解しているつもりです。DXはおろかITさえも普及していなかった時代、「人間が理解できる=勘と経験が使えるコード体系」が求められたわけです。ただし、その理解には経験という時間が必須となります。
「このコード体系が読み下せるようになったら一人前だな」と職場の先輩に言われたり、「あの人の頭には1万件ぐらいコードが入っている」などと特技のように言われたりした時代があったことは確かです。その勘と経験が製造業ニッポンを支えていたことも事実ですから、安易に否定することはできないと考えています。加えて現行の業務運用に組み込まれた品目コード体系の改革は容易ではありません。
しかし、改革を実行することが前提ですから、新たな品目コード体系は必須なのです。
「どうしても残しておきたい意味ありコード」には、部門別にその特徴が表れてきます。
例として、
- 購買部門:発注先コード(外注先、ベンダー)
- 技術・生産部門:機能や部位Assyコード
- 営業部門:顧客コード
などが最後まで残っていきます。これらの意味ありコードに長年慣れ親しみ、業務の判断に利用していただけに、それらとの決別によって起こる業務フローの変化に対する「不安」は認めざるを得ません。
しかし、AI(SI)も含めてDXが改革支援ツールとして存在する今、そのような「不安」からどのように決別するかは大切なテーマです。「不安」という心の問題のため、「頭では理解していても本当に大丈夫かな?」という葛藤と戦うことになります。それでも、避けては通れない関門なのです。
「品目コードさえ分かれば、それにひも付いた情報はなんでも入手できるのだ」という意識まで到達するのは容易ではありませんが、身に染み付いた感覚的な視覚情報からの決別はどうしても必要です。
なぜなら、改革という「脱皮」を行うのですから……
完全ランダム品目コード体系が正解とは限りません
意味ありコード体系からの決別がようやくかなったプロジェクト(PJ)であったとしても、完全ランダムコード体系のルールを検討していく過程で「ちょっと待った」という提案が時として出現します。
「えーっ、意味ありコードへの蒸し返し?」という暗雲が垂れこめるのですが、気を取り直してその「提案」を聞くと……
それは「大分類ヘッダーを付けないか」というものでした。
理由を聞くと、
「完全ランダムコードを採用するなら、30年後までコードが枯渇しないための桁数が必要です。目標のコード長をMAX 8桁とした場合、大分類ヘッダーとして先頭1桁にアルファベット23文字(そのPJではO、I、Xは不使用)を使い、残りを7桁とすることで、コードの資源効率が良くなるのではないか」
というアイデアでした。
ヘッダーに意味を持たせるということは、「大分類」という意味ありコードが存在することになります。例として、末尾にRev(設計変更)を表すサブコードを付帯させると
A1234567-00
|
Z1234567-00
ということになります。
この大分類の定義は別途ルール化していく必要があります。一方で、品目コード資源数の確保としての安心感はあります。品目コード体系の決定に絶対的な正解はありません。しかし、少なくとも数年後に「あの時もう少し、しっかり検討しておけば良かった……」などと後悔することがないように、ここは時間を費やしても深く検討したいところです。
改革後のあるべき姿を具体的に示す=具体的な効果を共有する
大分類ヘッダーに賛同が集まり「最終決定か!」という段階においても、示唆に富む反論がありました。
反論1:
そもそも流用化・標準化設計によって扱う部品数(品目コード数)は減っていくはず。だから品目コード資源を増やす可能性につながる大分類は不要ではないか?
なかなか、心強い意見です。私個人としては勇気付けられる反論でした。
反論2:
アルファベット入力による「大分類」に対して異論はないが、運用としてコード入力にフルキーボードが必要となる。テンキー入力ができない。
これには「あっ、そうだ!」と気付かされました。
確かにそのとおりです。しかし、「もう手入力する機会は激減するのでは? バーコードもしくはQRコードに置換される」という意見もあり、将来を見据えた運用に対する想像力も試される場面でした。
流用化・標準化設計を目指す設計部門改革の初めの一歩である、品目コード体系の新構築に向けた検討は容易ではありません。しかし、この体系が決定できなければBOM構築はできないわけですから、「脱皮の痛み」に耐える覚悟をもって臨んでほしいと思います。
各社にとって「初めての経験」です。ですから、PJメンバーが今まで抱えていたいろいろな思いがようやく俎上(そじょう)に載ってきます。当然、異論、反論が出て「摩擦熱」を生むのですが、このこと自体、非常に重要な過程であると考えています。
なぜなら……
摩擦熱や脱皮の痛みなき改革は存在しない、と考えているからです。
以上
次回は12月4日(金)の更新予定です。
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