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第178回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その100~N社全社効率改善改革の社内資料を共有します その3あるべき姿編

中小中堅製造業を取り巻く環境は待ったなし! で生き残りへの改革を迫ってきます。効率改善改革に挑むN社の社内資料公開の許しを得ましたので共有します。悩める製造業の改革への気づきとなることを望みます。今回は、その3として「改革を成就させて、素晴らしい会社にしよう!」という経営層の思いと、それを支える信念の大切さを述べます。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その100~N社全社効率改善改革の社内資料を共有します その3あるべき姿編

178回目の本コラムですが、気が付けば「設計部門BOM改善コンサルの現場から」シリーズを「~その100~」として迎えることができました。「よくネタが尽きないね?」と多くの方々から問われます。幸か不幸か(?)全くコラムのネタに困ることはありません。そのくらい中小中堅製造業の「現場」には皆さんと共有したい課題や話題が存在しているのです。

お預かりする会社から特に多い質問に「他社はどうしているのかな?」があります。横並び意識とはいいませんが、「わが社は世の中平均から見て、どうなのだろう?」という疑問や不安は理解できます。そして、その解は「各社の現場」にあると信じています。

その辺りをモチベーションにして現場シリーズをさらに継続したいと思っています。
100回に至る過程には、私事ですが鯨飲族からスマドリ族に転身するという激変もありました。それでもホッピー(=そと)だけはいまだに愛飲しています。変わるものと変わらないものとがありますね……
今夜は現場シリーズ100回記念をホッピーと共に乾杯するつもりです。
最後になりますが、何より皆さんの愛読あっての本コラムです。引き続きの愛読をお願いいたします。

N社の経営層は全社改革の必須性を「かく語りき!」

お預かりしたN社の多大なご協力によって、改革プロジェクト(以下PJ)の内部資料を皆さんと共有する機会を得て、これのご紹介を進めてきました。

アプローチ編
第176回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その98~N社全社効率改善改革の社内資料を共有します その1アプローチ編

モチベーション編
第177回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その99~N社全社効率改善改革の社内資料を共有します その2モチベーションプランニング編

今回はその最終回として「あるべき姿編」を述べたいと思います。
「改革成就の結果として、このような未来が待っている」と経営層はPJメンバーのみならず全社員に対して説き、納得してもらわなければなりません。「バラ色の未来」などというベタな抽象表現では改革は成就しませんし、何より改革を実行する主体者である社員にその思いは届かないでしょう。
従って、具体的な業務展開を実例にして「Before / After」で分かりやすくインパクトのある表現であってほしいと思います。そこには経営層としての思いを濃縮して、かつ、分かりやすく=こうしたかった! というボトムラインは必須なのです。
「こうしたかった!」という思いを的確に表現したN社の経営層が作成した資料を並べてみました。

まずは設計部門の説得から取り組んだことが分かります。
BOM構築をしていなかった設計部門から必ず湧き上がってくる「BOM構築=余計な仕事論」との戦い(?)から始まります。今まで構築していなかった設計者からすれば、BOM構築は余計な仕事と映ります。

「いやいや、そうではないのです。BOM構築を終えて初めて設計者の仕事が終わるのです。なぜならば……」
という説得を上記の資料は一枚で端的に表現しています。

何より失敗の研究の結果も添えて、共感も伴う資料です。「そうか主因はそこにあったのか!」という気づきへの誘いです。設計者は知見への発端さえ見いだせれば、自ら行動を起こしてくれる人々と考えています。その意味で、自己実現とつながる展開が理解できれば、積極的に取り組んでくれるでしょう。

感心させられたのは……
「じゃあ、BOMさえ構築すれば良いのだな」という短絡思考に対する「抑え」もしっかり用意されていたことです。

「BOMという情報形態の構築と、それを正しく維持するためのルール」という基本と、何より「そのルールを決めていくのはわれわれ(設計部門)自身であり、全員が納得し、それに従う」という重要な考え方がシンプルに表現されています。

私も多くの「地ならしコンサルティング」を実施してきましたが、その趣旨は上記2枚で集約されてしまいます。
では何が異なるのか?……

  • 見たことのない第三者のコンサルタントが口角に泡を飛ばしながらの「説教」

と

  • 「苦楽を共にして内実(今までの経緯や政治的背景など)を知った経営層の説得」

との相違です。

この差は比べるべくもなく、比較にはなりません。身内の言葉は強力です。従って、私には立つ瀬はありませんでしたが……(笑)

中小中堅製造業の場合、やはり経営層のリーダーシップは良くも悪くも影響力は大きいと感じています。従って、PJリーダーが経営層との間に挟まって身動きが取れなくなるようなつらい現象を起こすことなく、改革を進められます。
つまり、経営層は「朝令暮改」とは言わないまでも、試行錯誤や失敗の研究から得たノウハウを率直にPJメンバーと共有して、遠慮なく方針転換すべきと考えます。このスピード感は何事にも代え難いと感じますし、中小中堅製造業という組織サイズがモノを言うメリットです。

これら経営層の思いを届けることができれば、「まずは設計部門から取り掛かろう!」という進捗(しんちょく)案に説得力をもたらします。「なぜ設計部門から始めるのか? 設計部門の改革が成就しないと、全社改革は成就しない」という必須な説得力の核心です。

個人的には「BOMはIT投資ではなく、経営改革への投資です」という一文に感銘を覚えました。
経営層だからこそ表現できる、重く貴重な一行だと思います。

改革後のあるべき姿を具体的に示す=具体的な効果を共有する

「改革成就のあかつきには」という「将来の夢の話」は、改革成就へのモチベーションプランニングとして最も重要です。
改革遂行のエネルギー源です。

ですから「ニンジンをぶら下げて」などという低次元ではなく、共有できる具体的な問題を抱える業務例を「見積原価作成」に絞ったわけです。
Beforeとして「見積原価作成業務」を示し、この業務に関わる「無理・無駄・不具合」の存在を説明しなくても、全社員が共有しあえると想像します。この「頭の痛い業務」が、改革によって「矢印で示すように短時間で流れるようになります=新しい高効率業務フローの誕生」と表してあります。

そして、この新業務フローをAfterとして工数例も添えて具体的に示しています。
書かれている新フローの時間も具体比較として大切ですが、最も素晴らしいのは矢印が同じ方向を向いていることです。つまり、「手戻りのない業務が可能になる」という「将来の夢の話」を経営層自ら描いているのです。

「手戻りのない業務」……たかが8文字ですが、業務効率を劇的に改善するキーワードです。
前述したとおり、経営層が自ら吐露する「こうしたかった!」という言葉(=キーワード)の重みは全社改革という大事業には必須なのです。この辺りをご理解いただければと思います。

まとめ

N社の内部資料を共有しての3回にわたるコラムでしたが、N社経営層の「同様に悩む中小中堅製造業の一助になれば」という思いにあらためて感謝いたします。
このご厚意を無駄にすることなく、「悩める中小中堅製造業の改革のきっかけ」に結びつけてもらえれば大変うれしく思います。一方、N社の改革は「流用化・標準化設計プラットフォームの導入」という具体的なDXステージに入りました。今後も多くの試行錯誤を経て、それらを基にPDCAを回しながら進捗していくことと信じます。決して楽な道のりではないでしょうが「ゆっくりでも着実に」の思いをもって改革を成就してほしいと強く思います。

機会があれば「続・N社の改革」を、このコラムを通して届けることができればうれしいですね。

次回は11月6日(金)の更新予定です。

書籍ご案内

当コラムをまとめた書籍『中小企業だからこそできる BOMで会社の利益体質を改善しよう!』とその第二弾としての新刊『BOMで実践!設計部門改革バイブル 中小中堅製造業の生き残る道』を日刊工業新聞社から出版しています。
BOM構築によって中小企業が強い企業に生まれ変わる具体策とコツをご提案しています。
Nikkan Book Store(日刊工業新聞社)

BOMで実践!設計部門改革バイブル 中小中堅製造業の生き残る道(日刊工業新聞社Webサイト)