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第36回 続・流用化・標準化設計は営業の敵か?
今回は、本コラムの第18回で取り上げたテーマの続編を考えて見たいと思います。
まずは、是非18回の内容を読み返して頂きたいと思います。
設計部門が主体の流用化・標準化設計への改革に間違いはないのですが、しかし、全社的な視点で引いて眺めると、「この改革の成否に営業部門の意識改革が大変重要なテーマとして関わっている」という認識を最近さらに強く持たされるコンサルティング事例が多いのです。
第18回コラムでの肝は、「CSをもたらすことによって対価(お金)をいただき、その結果としてMS(私はこれをManufacturer’s Satisfaction = 製造者満足と呼んでいます)を得ること」でした。そうです!しっかり儲けることです。
しかし、この真意がなかなか営業部門に伝わらないのです。「流用化・標準化設計への移行は、当社の強みである個別仕様受注の能力を否定するものだ」という反論が営業部門からは聞こえてきそうです。
ここで、皆さんと再度確認したいと思います。
「お客様の言う通り」という個別仕様受注を私は全く否定しませんし、大切にしたい製造業としての能力です。たしかにこの形の受注もCSにつながることも同意します。
ですが、しかし、です・・・私は常々以下のように主張しています。
「個別仕様受注型製造業としての能力を、受注確保や他社競合への武器としてはいけない」
では、この能力は何のために存在させるべきか?
それは、「CSとMSを得るため=しっかり儲けるため」ということなのですが、その主張を理解してもらうまでには長い時間を費やします。
営業部門の開口一番「個別仕様を断れば受注できません!」は例外なく全社で聞くことができます。しかし、これは既にアウトで、「お客様の言う通りにしなければ失注します」と自らの営業能力の無さを露呈しています。
「個別仕様は利益確保の武器にします」と言えるような営業部門の意識改革が、流用化・標準化設計にどれ程重要なのかを皆さんも再度認識してください。
標準仕様と個別仕様を営業自身が上手く使い分けて・・・
標準仕様:「お客様のご要望仕様とドンピシャではありませんが、安く、早くお届けできます」
個別仕様:「ご要望の仕様を満足にお届けいたします。よって相応の値段をいただきます」
そうです、どちらも営業力が試されます。商売心(こころ)というプロ意識が無いと叶いません。
楽をして受注を確保したいという甘えの構造が商売心に芽生えると「お客様の言う通りにしますから注文下さい」という、悲しいかな「MSの確保」とは真逆の方向に進んで行くことになります。
「忙しくても儲からない」そして企業継続の断崖と呼ぶ「25A=粗利25%」の絶壁が足元に忍び寄って来ている現在、「お客様の言う通りにしますから注文下さい」では生き延びて行けないのです。
商売の始めの一歩である受注段階でいかに多くの利益見込みを確保するかという商売心こそが、苦労して実現した流用化・標準化設計という設計部門改革のリワードとして利益をもたらすと考えます。
それ程重要な営業部門の意識改革です。ですから、「なんか、設計部門が流用化・標準化設計にするみたいだけど、関係ないか・・・」などという声が営業部門から聞こえてこない様にするためにはどうすれば良いのか?
これはまさに私自身のコンサルティング過程における大切なテーマでもあるのです。
次回は12月5日(金)の更新予定です。
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