ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
製品、サービスに関するご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
基幹業務システム
データ活用とは? 種類やメリット、課題を徹底解説
企業が収集するあらゆるデータは、さまざまな用途で利用可能です。近年では、多くの企業がデータ活用に取り組むようになりました。データ活用によって売り上げ向上やコスト削減、戦略の策定・検証を図れます。
この記事では、データ活用の概要や現状、データ分析との違いや種類、活用によるメリットなどについて解説します。データ活用を成功させられれば、今まで気がつかなかった課題の発見・解決につなげられるでしょう。
データ活用とは?
企業が取り扱うデータは、社内に蓄積する業務や顧客のデータ、自治体や政府が公表するデータなど、さまざまです。データ活用とは、収集したあらゆるデータを分析してビジネスに生かすことを指します。
一度限りではなく、継続的な活用をすることで、多くの課題を解決できます。データ活用の主な目的は業務効率化や生産性向上などですが、その方法は経営のテーマや解決したい課題、活用する分野・領域によって異なります。目的を明確にしたうえで、収集するデータの種類や分析、活用の方法を決めましょう。
データ活用とデータ分析の違い
収集したデータはそのまま活用できるわけではなく、分析することで内容を整理し、活用しやすくする必要があります。
例えば、顧客の性別や年齢、住所などの情報を大量に蓄積しても、それだけで顧客傾向は分かりません。自社が主力とする商品・サービスをよく利用しているのはどの年齢層かといった目的に沿って情報をまとめ、整理することで戦略への活用が見込めます。
このようにデータ分析は、データ活用のプロセスの一つです。データ分析によって得た役立つ情報を継続的に活用することで、業績向上などの成果につなげられます。
データ活用の現状
いまや企業は、あらゆる方法で収集したデータを経営に活用する時代になりました。
総務省が2020年に発表した「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究の請負報告書」によれば、データを活用している主な領域は経営企画・組織改革や、製品・サービス、マーケティングなどです。報告書では、いずれかの領域でデータ活用している企業は大企業で約9割、中小企業でも過半数を占めているとされます。
さらに多少でもデータ活用による効果があったとする企業は、どの領域においても半数を超えました。データ活用による変化や影響について高い割合を占めているのが、業務効率や意思決定、マーケティング力の向上です。
今後のデータ活用についての希望として、多くの企業が「データの質の向上」や「分析技術の向上」を挙げました。企業の多くは、さらに入手できるデータの種類を増やし、AIなどの分析で活用できる体制を整備することにより、経営を向上させることを目指しています。
参照元:総務省「情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究の請負報告書」」
データ活用の主な種類
データの主な活用先としては、営業部門やマーケティング部門といった売り上げに関わる部署をはじめ、製造部門や経営企画室、経理部門や総務部門など、さまざまな部署で行われます。近年ではDX推進室などを設置する企業も増え、データ活用の重要性は増しています。ここでは、営業部門、マーケティング部門、製造部門の三つについて解説します。
営業部門におけるデータ活用
顧客や商談、販売のデータなどは、営業部門での活用が見込めます。
顧客の氏名や住所、メールアドレスなどの顧客データと、商品が売れた日時などの販売データを組み合わせることで顧客の属性や傾向を把握できます。顧客の傾向が分かれば、的確なアプローチや施策を打ち出しやすくなります。
また、商談データの成功事例を分析してノウハウを共有すれば、営業成績が向上するかもしれません。失敗事例からも学び、改善策を考えることによりミスの再発防止が可能です。
マーケティング部門におけるデータ活用
顧客データやアンケート結果などのデータは、マーケティング部門で活用できます。
サイトの閲覧履歴や店舗での購買履歴などを分析することで、顧客の行動パターンを割り出せます。顧客へのアプローチとして複数のパターンを用意する、購買意欲が高まる時期に広告配信するなど、効果的な施策につなげられます。
製造部門におけるデータ活用
製造部門では、メンテナンスやトラブル防止にデータを活用できます。あらゆる機器から収集したデータを解析することで、問題の原因究明や作業の効率化が図れます。
例えば、IoTを活用したセンサーによる監視・管理によって、確認作業の省力化、または自動化が可能です。これにより、ミス発生のリスクを低減できるうえ、人員を削減できます。蓄積したデータから今後、想定される故障などのトラブルを予測し、事前に対策することも可能です。ミスが低減すればパフォーマンスの向上にもつながるため、少人数で安全な製造の実現が見込めます。
データ活用のメリット
上述のとおりデータを活用することで、売り上げ向上やコスト削減、戦略策定など、多くのメリットを得られます。それぞれのメリットについて解説します。
売り上げ向上につながる
顧客や販売のデータを活用することで、ニーズの詳細な把握が可能です。例えば、データ分析の結果からアプローチするべき顧客の属性や商品、購買意欲が高まるタイミングを絞れます。顧客に最適な商品を提示することで購入されやすくなり、売り上げや顧客満足度の向上が見込めます。
顧客の要望や不満、商品への感想を理解することで、よりニーズの高い商品の開発や新規事業の展開につなげられるかもしれません。
コストを削減できる
製造や購買のデータを分析することで、不要な支出を抑えられます。コストがかかりすぎている部門・部署や、非効率的な稼働といった無駄を明らかにすることで、それぞれに効果的な対策ができます。例えば、資材や備品を安く購入している部門・部署のノウハウを反映することで、企業全体でコストを抑えた仕入れができるようになります。
さらに稼働状況から業務に最適な人員を割り出すことで、必要に応じた人員を充てられるため、人件費を低減できます。リソースに余裕が出れば、他の業務や事業でより効果的な活用ができるかもしれません。
戦略の策定と検証ができる
受注や出荷、売り上げや広告への反応といったデータを分析すれば、自社の商品・サービスのニーズを予測できます。潜在的ニーズを発掘できれば、新規顧客獲得にも有効なマーケティング戦略を打ち出しやすくなります。
また、施策の前後で比較できるようにデータ分析をすれば、その施策の効果や課題点が分かります。課題を基に施策を見直し、さらに新たな戦略を策定・検証するというサイクルを回すことで、継続的な改善が見込めます。
データ活用の課題
データ活用にはさまざまなメリットがありますものの、成功させるには幾つもの課題をクリアしなければなりません。
想定される課題は、以下のとおりです。
- 費用対効果が不明確
- 人材の確保が難しい
- データを利活用できるシステム基盤の整備
- 業務体制の整備
高度なデータ活用には、それを実現できるだけの機器やシステムを導入する必要があります。導入時の多額の初期費用に加え、管理・維持のコストもかかるため、ある程度の効果が見込める場合でも、費用対効果の面で必ずしも有効とは限りません。
また、データの加工や分析には、専門的知識やスキルを持った人材が必須です。データ分析やビッグデータの処理に長(た)けた人材の需要は年々高まっているため、データ活用に乗り出すのであれば、早めに人材確保に取り組む必要があります。
他にもデータ活用は、企業全体で取り組むものであり、従業員間で意識の違いや情報共有ができていないと効果を得にくくなります。従業員がデータ収集の方法や目的を理解できるような仕組みづくりを進めましょう。
まとめ
データ活用によって業績や生産性の向上、戦略の策定や検証が可能です。現在では、多くの企業がデータ活用に取り組んでおり、コスト削減やトラブル防止に役立てています。
営業やマーケティング、製造の各部門でデータ活用をすることで、顧客の属性に応じたアプローチや営業力アップ、ミスの低減などが可能になります。ただし、データ活用には機器やシステムといった基盤の構築や、分析スキルを持った人材の確保が必須です。費用対効果を考えたうえで、データ活用できる体制を整えましょう。