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基幹業務システム
データ連携とは? 連携方法やメリット、問題点を解説
データ連携とは、さまざまなシステムに散在する情報を専用のアプリケーションなどでつなげることです。データの整合性を担保したり、データ活用を促進したりするメリットがあり、多くの企業で導入が検討されています。データ連携には幾つかの方法があり、利用する際にはそれらの特徴や注意点などを知っておくことが大切です。
この記事では、データ連携の概要に触れながら、具体的な方法やメリット、課題などを紹介します。
データ連携とは?
データ連携とは、異なるアプリケーションやシステム間でデータを共有・活用することです。これまでは、顧客・人事・売り上げデータなど、企業が扱うデータをそれぞれの用途に応じた場所で管理するのが一般的でした。ファイルやクラウドサービス、データベースなど、さまざまな場所にデータが独立して散在しており、「必要なデータをすぐに取り出せない」「別のシステムに保管されているデータを参照できない」などの課題がありました。
データ連携では、それぞれのシステム・アプリケーション同士をつなぎ、一元管理が可能です。また、入力作業の省略など、業務の無駄を省く目的もあります。
データ連携の方法
データ連携には、以下の3種類の方法があります。
- ETL(Extract・Transform・Load)
- EAI(Enterprise Application Integration)
- RPA(Robotic Process Automation)
ETLでデータ統合
ETLとは「Extract・Transform・Load」の頭文字を取った言葉で、システム内のデータを収集・抽出し、用途に応じて加工するツールです。また、加工したデータをDWH(Data Ware House)などに書き出し、フォーマットを整えたうえで、まとめて格納してくれます。
データ連携で課題となるのは、システムごとにデータの形式が異なる場合です。それらを個別に変換していくとなると膨大な時間がかかります。しかし、ETLは一定の規則に従ってフォーマットを自動変換する機能を備えているため、データ統合を効率的に進められます。
EAIでリアルタイム連携
EAIとは、「Enterprise Application Integration」の略称で、企業が扱うさまざまなシステム・アプリケーションを連携させるツールです。先述したETLは大量のデータを抽出・変換し、分析しやすいかたちに書き出すことを目的にしていますが、EAIはサーバーを経由して幾つものシステムを統合管理するものです。ETLは大量のデータをまとめ、二次利用する場合などに適しており、EAIはシステム間でのデータ共有などをスムーズに行いたい場合などに適しています。
RPAで作業を自動化
RPAとは、「Robotic Process Automation」の略称で、提携業務を効率化するツールです。例えば、請求書や発注書などのデータをほかのシステムに転記したり、あるデータの中から異常値をチェックしたりといった単純作業を任せられます。ほかにもメールやスプレッドシートなどにひもづけることで、情報の収集や集計、メール送信などにも活用できます。
RPAの中にはデータ連携に特化したものもありますが、多くの場合はバックオフィス業務を効率化するために導入されます。
データ連携を行うメリット
EAIなどでデータ連携を行うと、データを整理・管理しやすくなります。ここでは、データ連携によって具体的にどのようなメリットが得られるのかを詳しく紹介します。
散在するデータを整理し、組み合わせることが可能
異なるシステムやアプリケーションなどに保存されているデータを統合し、組み合わせることが可能です。売り上げデータや顧客データ、人事データ、営業データなど、企業は多くの情報を扱っています。それらを別々のシステムで管理していると「別の部署で扱う情報を参照できない」「ほかのシステムで管理しているデータを転記しなければならない」などの問題が発生することもあります。データ連携をすれば、企業で扱うデータを一つの窓口に統合し、一元管理が可能です。
また、マーケティングや商品開発などでは、多くのデータを参照し、顧客の傾向などをさまざまな視点から分析しなければなりません。活用できるデータが限られていますと、最適な施策を実施できない可能性があります。データ連携はこれまで活用できなかったデータを参照でき、それらを組み合わせて効果的に活用可能です。
データの整合性を保つ
個別のシステムでデータを管理していますと、それぞれのデータに矛盾が生じる可能性があります。例えば、入力ミスなどによって在庫管理システムと販売管理システムに異なる数値が入力されていて、誤発注が発生してしまうケースなどです。
EAIなどのツールでデータ連携を行いますと、信頼度の高い最新のデータを用いたリアルタイムな連携が可能です。データの整合性を担保し、顧客からの信頼を獲得したり、損失を削減したりするメリットが期待できます。
データ加工の手間を減らせる
さまざまな形式のデータを扱う場合、それらを活用するには、まずフォーマットを統一することから始めなくてはなりません。手作業によって変換することもできますが、発注書や請求書、納品書など膨大な数のデータを変換する場合は、多くの時間や手間がかかってしまいます。
ETLやEAIなど、データの加工ができるシステムを導入することで、担当者の負担を大幅に削減できます。データ加工を効率的に進められ、その後に行う分析や施策の検討などへスピーディーに着手できます。
データ連携でよく見られる問題点
データ連携は、収集したデータを効率よく管理できる便利な方法です。しかし、連携の仕組みを理解していないとかえって管理が複雑になる恐れがあり、注意が必要です。ここでは、データ連携を導入した後に見られる問題点について具体的に紹介します。
データ連携後の管理の複雑化
多くのシステムやアプリケーションを連携する場合、その分コストも膨らみやすくなります。ツールによっては連携できるシステムの数が決まっており、追加料金を支払うことで機能を拡張したり、カスタマイズできたりするものもあります。また、システムの維持や修理などに人員を割く必要があり、多くの連携によって管理が複雑になると維持管理コストが増える原因になりかねません。
加えて、オンプレミスとクラウドはデータ連携がしにくく、専門の技術者への依頼が必要なケースがあります。場合によってはシステムの改修が必要になり、多くのコストがかかる可能性があります。
ブラックボックス化の恐れ
多くのシステムを連携させ複雑化したプログラムは、管理が難しいという課題があります。万が一、データ連携の担当者が離職するなど、仕組みを理解している人がいなくなった場合、システムがブラックボックス化する可能性も少なくありません。
そのようなケースを防ぐためには、引き継ぎ資料の準備や日ごろからの新人教育などで、管理業務が属人化しないように注意することが大切です。また、トラブルやイレギュラーへの対処法をまとめるなど、誰でも管理業務に携われるようにマニュアルを作成しておくとよいでしょう。
まとめ
データ連携とは、異なるアプリケーションやシステムをつなぎ、企業が扱うさまざまな情報を統合することです。ETLやEAIなどが用いられますが、どのような目的でデータ連携を行うかによって適切なツールが異なるので注意しましょう。
データ連携のメリットは、散在するデータを整理・再利用できることや、データの整合性が担保できることなどです。しかし、一方で導入後の管理が複雑になり、ブラックボックス化しかねないという課題もあります。多くのシステムをひもづける場合は、社内のマニュアルを整備するなど、管理業務が属人化しないように心掛けましょう。